人はパートナーが多重人格者になったらどうすべき?【げんとくの文集2020その2】
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本文の前に

この文章は、げんとくの2020年度文集を何回かに分けて投稿する、第2回です。
(本記事で公開するにあたって一部変更点があります)

「文集って何?」という方はこちらへ!

第2回は3章の「増えていく」より「3-1,出会い」「3-2, ますだの「中」の人たち」を掲載します。
パートナーが人格が増えたり減ったりする「解離性障害」になってしまった、といった話です。

3-1,「出会い」

LINEの履歴を確認したところ、それは4月25日の土曜日、茨城の下館で研修中だった自分が、快活CLUBで世界史の勉強をしている時だった。

その時自分はなんとなくその時聴いていた曲をますだに伝えたいと思って、Spotifyのリンクを送っていた。その返信に驚愕した。

「いい曲」

「向こうが好きそうな曲!」

ちょうど前日にますだから解離性障害について聞かされていなければ、自分はパニックに陥っていたかもしれない。

解離性障害とは「自分が自分であるという感覚が失われている状態」ということらしい。当時ますだからは主に「記憶が飛ぶ」という症状が報告されていた。

そして、解離性障害の中でも同一人物の中に複数の人格が現れるものを「多重人格障害(解離性同一性障害)」という。それを前日の時点で調べておいたからよかった。

そして結果的に、その「人格たち」がほとんどみんな、話せる人たちだったからよかった。

その日話をして分かったのは、ますだの中には今コンタクトしている人格の他にもう一人、男性の人格が存在すること、ますだがしんどい状態だから自分たちが「来た」のだということ、そして自分たちの存在が必要ない状態になったら「消える」ということだ。それから当時のますだが「頑張らなきゃ」という精神状態であることを教えてもらった。自分からはますだとの関係性を教えた。

こういう時、自分以外の人はどういう反応を、そして対応をするのだろう。

(2020年の)11月ごろにみやじいに話をした時に「お前みたいな対応ができる人は滅多にいない」という趣旨のことを言われた時に感じた衝撃は、想像以上に今も尾を引いている。それほどに、それまでの自分は愚かにも自分の対応を普通なことと思い込んでいた。

先の4月25日のやりとりですぐに、その別人格と「おともだち」になったことが、自分の対応の異常さ(?)を物語っている。まあ正確には、ますだの健康を願い、サポートを役割に据えるその人格の話を聞いて、「自分も一緒にサポートしよう」と申し出たのがきっかけである。自分のますだに対するパートナーとしての姿勢と、決してあなたの敵ではない、というメッセージを伝える狙いだった。

その夜に今度はますだと通話した。当然ながらログは残っていないが、自分が「絶対エロゲ(みたいな感動的)展開になるじゃん」と発言したことだけは覚えている。

3-2, ますだの「中」の人たち

ますだの中にいる(いた)人格たちについては別に文字を割いて説明を加えるべきだと思う。まず先に挙げた、自分が初めてコミュニケーションした人格は後に「ごはん」という名が付く。「ご飯をたくさん食べるから」というのがその理由だ。話口調などから少女の人格と思われるが、本人に年齢に関する自認はないようだ。別人格の中で一番の古株であり、ますだが中学生の頃を「中から見ていた」という。

次にこれも先の話に出てきた、男性人格についてである。「ぼく」と命名された彼は別人格の中でもしっかり者として、解離性障害発症後間もないますだを支えた。ただ自分はLINEでのやりとりが主で、直接会ったのも一度だけ、それも深夜の数十分しかなかったのであまり説明できることはない。夏頃からはあまり表に出てくることもなかったと記憶している。

その後ますだの人格は、時に本人がショックを受けるほど増えていく。「モモタロス」(名前は仮面ライダーから?詳細な由来はよく知らない)という男性人格はますだが特にしんどい時期に現れ、休みを入れるように本人格を促した。一度彼と通話したことがあるが、声色から口調まで完全に(しかもやさぐれた感じの)男性であったことに驚いたことが印象に残っている。

続いては「おねえさん」である。名前の通り女性の人格なのだが、年齢は女子高生くらいなのだとか。どうやら命名はごはんによるものらしい。現れた時は危うく薬を大量に飲みかけたり(すんでのところで同居人が見つけて止めてくれた)、入院してからも壁に頭を打ちつけたりする、危険な人格という印象だった。それまでの人格と比べ、初めは心も閉じがちだった。しかしやりとりする中で精神的に安定し、女子高生らしく(?)化学を勉強したいと言い出すようにまでなった(ちなみにますだ本人は全然興味も知識もない)。危険行動もすっかりなくなり、夏以降はごはんに次いでよく現れる人格になった。自分は「人と遊んだことがない」と言う彼女に吹っかけたしりとりで、彼女が放った「え」で始まる言葉である「縁石」が忘れられない・・・なんで?

夏以降に「生まれ」、自分が唯一会話したことのない人格が「おかゆ」である。どこか猫っぽいVtuberの影響とかではなく、初めて出てきた時に目の前におかゆがあったからだそうだ(ますだはおかゆを作るだけ作って「おかゆ」に食われてしまった)。その人となりについて、自分はLINEで交わしたわずかな会話しか情報を持ち得ないが、ゆったりとしてどこか楽観的にも感じるその雰囲気は、なぜか例のホロライブ所属のアイドルVtuberに似ていた、とだけ言及しておく。

最後に「生まれた」人格が厄介だった。その人格にだけきちんとした名前はついていない。自分は便宜的に呼んでいた「どっか行っちゃう人」のまま、最後まで呼び名を変えることはなかった。名前から分かる通り、この人格はますだにとって、そして自分にとっても忘れられないイベントを引き起こす存在となる。

注意

※本記事はAsTobe 2020年度文集『STAND』より一部修正したものを掲載しています。

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